ABMとは?考え方から導入の仕方を徹底解説!

ABMは、大手企業で多く採用されているBtoBのアプローチ方法です。そのため、これから大手企業で働く新入社員や、大手企業に転職を考えている方は特に知っておきたい内容でしょう。ABMに関して詳しく解説するので、是非参考にしてみてください。
ABMとは
まず、ABMとはアカウントベースドマーケティング(ABM:Account Based Marketing)の略称で、個人ではなく企業への戦略的なマーケティング手法を意味します。
ABMにおいては、「自社にとって価値の高い顧客を選別して、顧客に合わせた最適なアプローチ」を実現します。
従来のマーケティングとの違い
ABMは、近年主流になってきたマーケティングですが、従来とは何が違うのでしょうか。その違いについて解説します。
まずは、従来のマーケティングについて解説した後に、ABMに移り変わった背景をご説明します。
従来のマーケティングは、顧客の「知りたい」「欲しい」といった「欲求」を顧客の中から出す点が特徴です。見込み顧客との接点をつくるために、顧客の「欲求」を考え、その結果を営業部門へ報告し、リードを開拓してもらう流れになります。
しかし、情報を営業に渡したにも関わらず、営業がリード開拓しない問題が生じました。この問題を解決するために考えられた手法がABMです。
従来のマーケティングとABMの違いを簡単に表すと、「リード開拓を個人単位ではなく企業単位でアプローチすること」です。
例えば、営業が通っている取引先の部署にソリューションを提案したとします。しかし、提案をした部署が管轄外の部署だとしたら、意味がありません。
この場合、提案ができる且つ管轄内の部署、つまりキーパーソンとなる役職の人に最初からアプローチができれば効率よく取引ができ、売上げを伸ばせる可能性があります。
このアプローチがABMであり、より高度で精緻なデータ管理や、ターゲットに最適なマーケティングを行うことが可能となります。そのためには、管理チームや維持コスト、ツールなどを継続して保持しなければなりません。
ABMと従来のマーケティングの違いを簡単に表すと以下図になります。

従来のマーケティングに比べてABMでは、より企業が求める商材をピンポイントでアプローチ可能なので、売上げも上がりやすい仕組みになっています。
なぜ近年ABMが注目されるのか
ABMが注目されている理由は4つです。
1. マーケティングテクノロジーが進化したから
2. LTVが重視されるようになったから
3. 売上げを最大化するのに適しているから
4. 経営方式がトップダウン型からボトムアップ型へ
それぞれ深掘って解説していきます。
マーケティングテクノロジーの進化
ABMが注目されている理由の1つは、マーケティングテクノロジーが進化したからです。
従来のマーケティングでは優良顧客の選別や企業ごとのマーケティング施策立案には、人件費も含め多くのコストが掛かっていました。しかしマーケティングテクノロジーが進化したことにより、様々なマーケティングツールの活用によって効率よく顧客をターゲティングし、企業ごとに施策を打つことで売上げをあげることが可能となりました。
それにより、顧客ベースのマーケティング手法であるABMも注目されるようになりました。
マーケティングツールとは、以下のようなツールのことを指します。
・SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)
・CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
・MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)
LTVの重視
ABMが注目される理由の2つ目は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が重要視されるようになったからです。
LTVが重要視される理由の1つに「シェア」がキーワードとしてあげられます。具体例を挙げると、例えば個人に当てはめた場合、生涯で車を何台買うのか、または生涯で子供に対してお金をどのくらい使うのか。こういった内容を統計データから深堀していき、統計データに焦点を当て、数%でも自社の商材を買ってもらえれば売上げはおのずと上がります。
ABMは個人に対してではなく、企業が求める商材のシェアを勝ち取ることが大切です。そのため、LTVが重要になったことで、ABMにも注目が集まるようになりました。
また、ABMは既存顧客をターゲットとしたマーケティングです。既存顧客から仕事を獲得するエネルギーと、新規顧客を獲得するエネルギーの比率を表すと「1:5の法則」になります。これに基づくと、新規顧客は既存顧客から仕事を獲得するのに5倍ほど労力が掛かることになります。
また、5%の顧客離れを防げれば、25%の利益を改善できるという法則があります。つまり、既存顧客を守ることで利益も確保できます。そのような背景もあり、LTVが重要視されています。
売上最大化に効果的
ABMが注目される理由の3つ目は、売上げの最大化に適しているからです。上述しましたが、ABMでは、より高度で精緻なデータ管理、ターゲットに最適なマーケティングを行うことになります。
ピンポイントで企業に自社ソリューションをアプローチし、結果的に売り上げを最大化させることにつながります。
経営方式がトップダウン型からボトムアップ型へ
ABMが注目される理由の4つ目は、「経営方式がトップダウン型からボトムアップ型」になっていることです。
この背景には、ITテクノロジーの進化により、部門別に特化した専門性の高いツールが普及したことがあげられます。
具体的な内容を挙げると、マーケティング部門にはマーケティングツールが必要で、購買部門には発注や納品等を管理するツールが必要となります。部門ごとに必要なツールも活用方法も違います。部門ごとに悩みも違いますし、改善をするツールも違います。
このようにビジネスの現場が複雑化した結果、経営トップが現場を逐一キャッチアップすることが難しい状況にあります。
つまり、現場の課題や悩みをシステム化するには、経営陣だけでは把握ができないため、管轄している部署が吸い上げる必要があります。トップダウンだと意思決定に関わる人が少なかったものが、意思決定に携わる人が増えたことで自然とボトムアップ型へと移行していきました。
ボトムアップ型に経営方式が移り変わる中で、営業的観点から考えても、どこにアプローチするのか把握するために、より精緻なデータが必要になります。
マーケティング部門に発注や納品等を管理するツールは必要ないですし、購買部門にマーケティングツールは必要ありません。そのため、企業単位で各部門ごとのニーズを確度高く把握できるABMが注目されているのです。
実際にABMを導入する方法
ABMを導入することで、営業マン個人に集中している負荷を軽減し、営業とマーケティング部門が協力することで、企業にアプローチする仕組みづくりが可能となります。
ABMを導入する具体的な方法は以下6つです。
1. 営業部とマーケティング部の協力体制の構築
2. 顧客を洗い出す
3. 顧客の評価基準を決める
4. ツールを導入する
5. 評価に応じたアプローチ方法を決める
6. 分析・改善を行う
それぞれ具体的に解説します。
営業部とマーケティング部の協力体制の構築
ABMを導入する具体的な方法の1つ目は営業部とマーケティング部の協力体制の構築です。
マーケティング部が頑張ってマーケティング内容を提案しても、営業が営業先の企業に提案しなければ意味がありません。
まずは、双方の部門で協力体制を構築した上で、どのような流れで企業にアプローチするのかを決めて、ABMを導入します。
顧客を洗い出す
2つ目は、顧客を洗い出すことです。ABMは対企業へアプローチするマーケティング手法なので、既存顧客数や、年間の取引額、企業体質などを洗い出すことが重要になります。顧客名を洗い出すだけでなく、企業の細かい情報をまとめることが大切です。
顧客を洗い出す目的は、利益を最大化するためです。利益を最大化するためには、企業ごとの細かい情報を収集する必要があります。収集したデータを企業ごとに細分化することで、新しい商材や情報を入手した際に、企業に合った情報を提供することで、売上げにつなげることができます。
顧客の評価基準を決める
3つ目は、顧客の評価基準を決めることです。
顧客の評価基準を決めるというのは、顧客の評価をする際に、売上額で見るのか、利益率で見るのか、企業体制で見るのかなど、何を見て評価をするのかを決める、ということです。
あくまでも自社の利益額を最大化することが目的になりますので、顧客の評価基準も自社の利益額を最大化することを前提に決めることになります。
一例として、顧客との取引額(売上)を確認します。

この場合、A企業がダントツで売上を上げてくれています。こうして選別した場合に一番売上を上げているA企業に、より売上を伸ばしてもらえれば自社の利益を最大化することが可能と考えるので、この場合は取引額(売上)を評価基準として定めます。
このように、企業ごとに分析をして属性や要素を見極めて顧客の評価基準を決めます。評価基準を定めてその評価基準に応じたアプローチ方法を決めることで、企業ごとのマーケティング施策が立てやすくなり、その結果ABMを導入しやすくなります。
ツールを導入する
4つ目はツールの導入です。
ツールを導入する目的は営業個人に情報を集中させず、ツールで一元管理をすることで、情報を見える化することが最大の目的です。
企業ごとの情報を見える化することで、リードの開拓状況やお客様の最新の情報を管理できます。従来のマーケティングで課題だった営業個人がリード開拓をしないということを補っています。
マーケティングテクノロジーが発展し、効率よく企業にアプローチできる時代となりました。MA、SFA、CRMといったマーケティングツールを活用することでより効率的に売上げを伸ばす手助けとなっています。
MAについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
評価に応じたアプローチ方法を決める
5つ目は企業ごとの評価に応じたアプローチ方法を決めることです。
顧客の評価基準を決める~という部分でも触れましたが、企業ごとの評価に応じたアプローチ方法を決めることで、企業ごとにマーケティング施策を立てることができるため、ABMを導入しやすくなります。
効率よく売上げをあげたいと思うのが営業の心理です。そこで、既存顧客との取引金額が見えていると、売上をあげられる企業に効率的にアプローチできます。
取引金額を管理できるツールが、SFAです。SFAは商談ごとに管理できるため、受注した金額も確認でき、自身の売上額も同様に把握することが可能です。
また、SFAではどの取引先が定期的に仕事をもらえるか、ということも過去の受注履歴を追うことで把握できます。
取引先ごとの受注金額から、どんな案件で取引があったのかを考慮した上で、追加提案できる商材を探すこともできます。決算情報なども入れておくと便利です。
企業の決算前で且つ利益が出ている企業に対して、提案できる商材をアプローチして決算前に押し込んで稟議を通してもらう。といった具体例もあります。
お客様がお金を出せるタイミングを把握することができるのもメリットです。
分析・改善を行う
6つ目は分析・改善を行うことです。
アプローチをして、そのアプローチ方法や商材が企業に対して合致していたのかを分析します。売上げとしてあがっているのかを確認するということです。
最適なアプローチであれば売上げがあがりますが、そうでなければ最適なアプローチができていなかったと仮定します。 トライ&エラーの繰り返しでなぜ売り上げがあがらなかったのかを考えて改善をしていきましょう。アプローチする時期が悪かったのか、商材が悪かったのか、改善の余地はいくらでもあります。
まとめ
ABMの導入は簡単なことではないので、最初は上手くいかないこともあると思います。しかし、トライ&エラーによる分析と改善を行うことで道は拓けます。
企業に対し、最も効果的で売り上げを最大化できるABMを活用し、自社の売上げの最大化を図ってみることをおすすめします。
ABMを取り入れて利益の最大化を図りましょう。
株式会社ヒトノテの代表取締役CEO。
エンジニアとしてキャリアスタートし、サイバーエージェントのSEO分析研究機関を経て、リクルートの横断マーケティング組織のマネージャー&全社SEO技術責任者を務める。その後、独立しSEOを中心としたクライアントの課題解決を行う。2017年、株式会社ヒトノテを創業し、様々な企業のウェブマーケティングの支援を行う。監修者:坪昌史
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